WHAT IS FUDO?

風洞とは



「日本風洞製作所」の社名にも入っている「風洞」という装置。多くの方にとってはなじみのない言葉かもしれませ ん。このページでは、「風洞」にまつわる基礎知識や用語や技術、性能指標などをわかりやすく解説します。

目次

1.「風洞」とは何か
2.風洞の使われ方
3.風洞の基本構造
4.送風方法
5.風洞の性能指標
6.風洞実験に用いる機材
7.流体シミュレーションとの違い
8.Aero Optimが成し遂げること
9.Aero Optimの使用例

「風洞」とは何か

 風洞(ふうどう)とは、風の流れを再現し、観察・検証・計測を行う装置のことです。その名の通り、「風」が通る「洞穴」のような形をしています。
たとえば、航空機やロケット、自動車や鉄道といった乗り物の開発、自転車競技などのスポーツ分野、さらには建築や農業に至るまで、幅広い分野で活用されています。
サイズは、手のひらサイズの模型を測る小さなものから、飛行機の実物を入れることができるほど大きなものまで、風速もそよ風レベルのものから、超音速を出せるものまで、多くの種類があります。

研究機関に設置された大型風洞
大型風洞の測定部

「風洞」の使われ方

風洞には、主に次のような用途があります。


風から受ける力を調べる。(1~6軸)

 風によって、試験対象物が受ける上下・前後・左右方向の力や、回転方向(ロール・ピッチ・ヨー)にかかる3方向の、合わせて最大6方向の力を測定します。

風の流れを調べる。

 風の流れを、スモークやレーザーで可視化することで、試験対象物の周りの風の流れを調べることができます。上記の「■風から受ける力を調べる。(1~6軸)」で調べた力の原因を調べ、改良点を探るときによく用いられます。

風による騒音を調べる。

 モノに風が当たると、風切り音が発生することがあります。特に乗り物では騒音の低減が重要ですので、研究開発のために音を測定する必要があります。この場合、風洞には吸音材を貼るなど、風洞本体の騒音をできる限り抑える工夫がされます。

風による圧力を調べる。

 試験対象物の表面のどこにどれくらいの圧力がかかっているかを測定します。多数のセンサーを埋め込んだ模型を 使って試験を行います。

その他

 振動を調べる「フラッタ試験」や、風だけでなく水を散布して暴風雨を再現する試験なども行われます。

風洞の基本構造

1.形による分類


エッフェル型

 開放型とも呼ばれ、吸込口と吹出口がいずれも大気に開放されています。送風機を測定部の前に置く「吹き出し式」と、後ろに置く「吸い込み式」があり、両者を併用する場合もあります。

エッフェル型(吸い込み式)

 乱れの少ない静止状態の大気を吸い込むため、大掛かりな整流設備がなくても高い気流精度を実現できます。一方、流路の壁面を密閉しなければならないため、閉塞効果の影響を受けやすく、測定対象物をあまり大きくできません。

エッフェル型(吹き出し式)

 最もコンパクトな構造の風洞です。測定部の壁面をオープンにすることができるので、閉塞効果の影響を受けにくい一方、ファンから吹き出される乱れた気流を整流するために、大掛かりな整流設備が必要になります。Aero Optimはこの形状を採用しています。

ゲッチンゲン型

 回流型とも呼ばれ、エネルギー効率が高く、高風速を実現しやすい風洞です。一方、エッフェル型の何倍もの設置面積を必要とするため、設備が大掛かりになりやすく、専用の建屋を設けることもあります。また、空気の入れ替えができないので、気流の可視化のために長時間スモークを用いることができません。

2.風洞の基本パーツ


風洞は、大きく以下の4つのパーツに分けることができます。


送風機

 風を送り出す装置です。吹き出し式の場合は測定部の前に、吸い込み式の場合は測定部の後ろに取り付けられます。

整流部

 メッシュ(金網)やハニカム(ハチの巣のような六角形の集合体)を用いて気流を均質化する部分です。

縮流部

 均質化した流れを細くすることで、風速を上昇させるとともに気流精度を向上させる部分です。

測定部

 試験対象物や測定機器を設置して、実験を行う区画です。

送風方法

軸流送風機

 扇風機と同じ仕組みで風をおくります。 ファンの直径を大きくすることができるため、大きな断面積を持つ風洞に採用されます。Aero Optimはこの方式を採用しています。

遠心送風機

 高い圧力で風を送り込むことができる仕組みですが、吹出口が小さいため大きな風洞には不向きです。小さな面積に高い風速の風を流す際に採用されます。

間欠吹き出し式

 上流に高圧タンク、下流に低圧タンクを設置して、圧力差を利用して送風する仕組みです。超音速風洞のようなハイスピードの気流を必要とする風洞に用いられます。タンクへの空気の貯留と測定を繰り返すため、実験できる頻度は低く、一度の実験時間も極めて短くなっています。また、空気の断熱膨張により温度が急激に下がるため、上流の空気タンクの予熱が必要になることもあります。

風洞の性能指標

測定部断面積

 送り出す気流の断面積を表します。吹出口寸法などの呼び方もあります。原則として、広いほど大きいものを測定可能ですが、壁の有無によって影響なく測定できる断面積は異なります。一般に、壁が無いほうが測定可能な面積は広い傾向があります。

風速分布

 測定部断面上で各地点の風速を測定してプロットしたものです。全体的にばらつきがなく一様であるほど高性能な風洞といえます。壁に近い部分では、壁との摩擦により風速は低下します。

最大風速

 風洞が送り出す気流の最大速度です。

乱流強度

 風速の乱れ度合いを表す指標です。たとえば、設定風速10.0m/sに対して±0.1m/sの変動があるときは乱流強度1%となります。x,y,zの3方向それぞれに対して求めることができますが、多くの場合気流の吹き出す方向での乱流強度のことを指します。

縮流比

 気流を縮流したときの、縮流前後における気流の断面積の比率です。たとえば、2×2mの気流を1×1mに縮流すると、縮流比はn=4となります。

風洞実験に用いる機材

風速計

 気流の風速を測る機械です。ファンを回転させる「ベーン式」、ベルヌーイの定理により、動圧と静圧という2つの圧力から風速を算出する「ピトー管」、超音波を使った「超音波風速計」、電熱線が気流により冷やされ、抵抗値が変化することを利用した「熱線風速計」などがあります。

測定台

 抗力・揚力・回転などの、試験対象が風から受ける力を調べます。

乱流格子

 気流にわざと乱れを発生させる装置です。

スモークマシン

 気流の可視化を行うための装置です。煙を流し、気流の観察や撮影などを行うことができます。

タフト

 気流の可視化を行うための細い紐です。測定対象物の表面に貼り付け、紐の振れ方、流されている向きなどでその場 所での気流状態を観察することができます。

トラバース装置

 風速測定機器などを取り付け、測定部内を移動し、任意の点の測定を行うための機械です。手動では何日もかかるような数百~数千点の計測もプログラムにより自動で行うことができます。

流体シミュレーションとの違い

 最近では、技術の発達により、コンピュータを使った流体シミュレーション(CFD)が普及してきましたが、風洞試験は未だに多くの場所で活躍しています。それはなぜでしょうか。そこには、主に3つの理由があると考えられます。


結果の信頼性が高い

 CFDでは入力した条件をもとに大量の計算を行います。そのため、計算結果は入力した条件に強く依存し、ほんの少しでも入力条件に誤りがあると計算結果は大幅にずれてしまいます。CFDを扱うには、適切な条件を設定できる高度な能力が求められます。乱れを含む流れや布などのはためく素材などのシミュレーションは特に難易度が高いとされています。一方、風洞試験では、実物に実際に風を当てるので、その結果の信頼性は非常に高いものとなります。

試験時間が短い

 CFDには、スペックの高い専用のパソコンを用意しても、1条件の計算に数時間~数日かかります。また、異なる条件の3Dモデルを準備するのにも多大な時間を要します。一方、風洞試験では実物を使って試験を行うため、短時間に多数の条件の試験を行うことができます。その場で修正を加えながら試験を行うこともできます。

人間でも立ち入ることができる

 特にスポーツ分野においては、選手のフィーリングも極めて重要です。選手が実際に風を受けることができる風洞試験は、CFDが取って代わるものではありません。技術者、選手が実際に流れを体感しながら試験を行える風洞試験は感覚とデータを結びつけることができる重要な機会になります。試験結果はその場ですぐに出るため、試験対象への修正・改善も効率的に行うことができます。

風洞の欠点とCFDの利点

 風洞実験が上記の点でCFDより優れている一方で、欠点として「細かい部分のデータを見ることが難しい」ということが挙げられます。たとえば、「この自転車のヘッドチューブから10cm後ろで1mm間隔の流速分布を見たい」といった実験は、風洞では極めて困難であるものの、CFDでは任意の箇所で断面を切って結果を表示することが可能です。そのため、最近では、CFDで細かい部分の検証を行い、最終確認として風洞試験を行って検証する、といった役割分担が見られるようになってきました。

Aero Optimが成し遂げること

 これまでは、風洞というと、「大面積・高精度」か「少面積・高精度」の2つしか選択肢がありませんでした。しかし、世の中には、もっと風洞を使える場所があるのではないかと考えた私達は、誰でも気軽に風洞が使える「風洞の民主化」をキャッチフレーズに、「Aero Optim」シリーズを開発しました。

 Aero Optimシリーズでは、精度・風速別にAero Optim-B, S, X の3つのベースモデルをランナップ。それらのユニットを連結したり、縮流ユニットを装着したりすることで、送風面積の拡大や気流精度の向上を図ることができます。カスタマイズ可能な小型風洞によって、お客様の必要最小限の精度・面積・風速を柔軟かつ安価に提供します。


従来の風洞とAero Optimの比較


従来の風洞に対するAero Optimの立ち位置


Aero Optimのカスタマイズ例

Aero Optimの利用例

スポーツ分野

 近年、スポーツ分野では風洞実験の重要性が増しています。特に自転車競技では、自転車を漕ぐ力の8割以上が空気抵抗により消費されることもあり、いかに空気抵抗を減らせるかの研究が競技成績に直結しています。

 スポーツ分野における風洞実験は、選手が実際に風を感じながら空気抵抗を測定すると同時に、適切なフォームを設定できるという唯一無二のメリットがあります。ところが、従来の高価な風洞では、風洞実験を利用できるのはごく一部のトップアスリートに限られていました。小型・低価格なAero Optim シリーズは、スポーツ用品店に設置することもできるサイズ。これにより、アマチュア選手でも気軽に風洞実験を体験でき、空気抵抗改善による競技力向上を誰でも楽しむことができるようになります。


使用例:Aero Optim-S + 自転車用測定台

研究開発分野

 産業分野でも、風洞実験は重要な試験の一つです。航空機、ロケット、自動車、自転車、そして建築や農業など、さまざまな分野で活躍しています。Aero Optimを導入することで、中小企業でも気軽に風洞実験ができるようになるほか、大企業でも、風洞実験の高頻度化を図ることが可能になります。


使用例:自動車の試験


耐風試験